Suicaモニター体験レポート


このページの内容について

 2001年春から初夏にかけて、JR埼京線沿線で実施されたSuicaモニター募集に、埼玉弱問研の会員の芳賀さんが当選しました。弱視者としての使いやすさを埼玉弱問研の定例会でも健闘しました。

 ここに「弱問研つうしん」に芳賀さんが投稿したレポートを紹介します。

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体当たりSuicaレポート その1

はじめに

 夏はやっぱり「すいか」、そして「Suica(スイカ)」!この横文字のSuicaは今年末にJR東日本が導入を予定している非接触型ICカード出改札システムのことです。本格的な導入を前に、4月から約3ヶ月間埼京線でモニターテストが行われました。埼玉弱問研の数名がモニターに応募しましたが、なぜかハイテク音痴のおばさん、芳賀一人が当選しました。というわけで、これから3回にわたって、「体当たりSuicaレポート」をお届けします。

【Suicaっていったい何?】

 今私たちが自動改札機を通して使っている定期券、イオカード、切符は、磁気カードです。磁気カードは料金や有効期間など最低限の情報が記録されています。それに比べてICカードはたくさんの情報を入れることが出来ます。ICカードは銀行のキャッシュカードのように硬いカードで表面はツルツルです。このカードの中に情報を記録するICチップが埋め込まれています。このICチップには今使っているイオカードのように事前にお金を払ってその金額を記録しておくことができます。

 Suicaの利用案内書によると今までの磁気カードに比べて次のことが便利なようです。

ということは、細かい料金表をいちいち見なくたっていい!人ごみを掻き分けて自動券売機の列に並ばなくていい!切符を買ったり精算するときに、あせって小銭をジャラジャラ探さなくていい!もしかしたら今までのように後ろにたくさんの人が並び、そこから鋭く繰り出される「無言の圧力」から開放されるかもしれません。これはナイスです。

 こんな期待を胸にSuicaのICカードを使って実際に何度か埼京線に乗ってみました。次回はその体験談をお届けしたいと思います。       <つづく>

(はが ゆうこ)

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体当たりSuicaレポート その2

【何はともあれ実践編】

 とにかくSuicaイオカードを握りしめて武蔵浦和から池袋まで埼京線に乗りました。4月のある日のことです。料金表も自動券売機もまったく無視し、ひたすら改札を目指しました。自動改札機の普段切符を入れる少し先の方に、カード読み取り機が埋め込まれています。その部分は少し出っ張っていて、白い円形の線で縁取られています。正しくカードを読み取ると「ピピッ」と音がして緑のランプが点きます。読み取れなかった時は「ピー」と音がして赤いランプが点きます。それでも無理に通ろうとすると扉が閉まります。色々な方向からSuicaを読み取り部分に当ててみました。その結果、上下、裏表はまったく気にする必要が無いことが分かりました。ただし、Suicaを立てた状態では読み取りが出来ず、エラーになります。改札を出る時もまったく同じ仕組みです。確かにスムーズ! いつもより早く電車に乗ることが出来ました。

【ポイント高いSuica対応自動券売機】

 SuicaはSuicaマークのステッカーが貼ってある自動券売機でしか使えません。このステッカーは券売機の上のほうに貼ってありますが、私には小さくてよく見えませんでした。どれがSuica対応券売機なのかを見つけることは出来ませんでした。でも、音声モードで実際に使ってみると、これがなかなかのものです。自動券売機で出来ることは次の4つです。

  1. 切符を買う。
  2. Suicaにお金を入れる。
  3. 利用明細を見たり紙に印刷したりする。
  4. Suicaの残高を見る。

このうち1から3までは、しっかり音声モードに対応しています。音声案内を聞きながら、テンキーで操作します。最初はちょっと戸惑うかもしれませんが、慣れればとても使いやすいです。まさに「座布団9枚」のポイントの高さです。

【戸惑いの乗越精算機】

 今回のモニターテストで、私が唯一分からなかったのが、乗越精算機の音声モードの使い方です。頼みの綱の利用案内書には音声モードの使い方は一切記載されていません。とにかく困りました。乗越精算をしようと、機械にSuicaを挿入して、音声モードへの切替ボタンを何度も押してみました。でも、画面はそのままで、一向に音は聞こえてきません。うーん、きっとやり方が違うのでしょう。画面表示は、従来の精算機に比べると格段に見やすくなっています。

 次回はモニターテストを終えての感想と、モニターアンケートに同封した簡単なレポートをお届けしたいと思います。

(はが ゆうこ)

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体当たりSuicaレポート 最終回

【まとめ編】

 すいかのおいしい季節を目の前にして、Suicaモニターテストは7月8日に終わりました。私の総合評価は座布団9枚といったところです。「どんなに努力しても使えない」という致命的なバリアは一つもありませんでした。このことを何よりも高く評価しています。利用マニュアルや機器の操作に関して、いくつか気付いたことがあったので、それらをモニターアンケートに書いてSuica事務局に送りました。以下にその内容を記します。

Suicaモニターアンケート 添付資料

マニュアルについて

要望1 マニュアルの内容に音声での操作方法を
各機器の音声モードでの使い方をマニュアルに載せて欲しい。
要望2 マニュアルの提供方法について
視覚障害者は紙のマニュアルを読めないので、カードの使い方がわからない。マニュアルの内容をフロッピーディスクおよびインターネットのホームページに掲載して欲しい。このとき、画像ファイルでなく、テキスト形式で情報を記述してあれば、画面が見えなくても音声読み上げで内容を確認できる。
現在、「Suicaってなに?」というパンフレットがインターネットで公開されているが、この内容のほとんどが画像ファイルであるため、音声では「画像」としか読まず、「次へ」ボタン以外にはほとんど内容を把握できない。音声読み上げでは、Internet Explorer(インターネット エクスプローラ)の詳細設定で「画像の表示」をしないように設定したような状況になる。画像表示をオフにしても、内容が十分に確認できるようにホームページを作成して欲しい。
また、インターネットに接続できない視覚障害者のために、フロッピーディスクでテキストファイル版のマニュアルを希望者に郵送して欲しい。

Suicaに対する要望

(1)すべての自動券売機をSuica対応にして欲しい。
視覚障害者は、たくさんの自動券売機の中からSuica対応のものを見つけることができないので、すべての券売機をSuica対応にして欲しい。
(2)自動券売機の音声モードにも残額表示を
自動券売機の音声モードにも残額表示を加えて欲しい。

Suicaを使った感想

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モニタアンケートを終えて

 私がこのアンケートに答えるときに心がけたことは次の3つです。

  1. 視覚障害者に本当に使えるかという疑いの目で粗探しをしない。
  2. すでに出来上がっているハードに対する意見は控え、ソフト面に対して意見を述べる。
  3. 出来るだけ提案型の意見を述べる。

特に難しかったのは、いかにわかりやすく自分の見え方や情報アクセスの状況を伝えるかということです。

 今回のモニターテストの応募からアンケートへの回答まで、丸山幹事長をはじめ埼玉弱問研の皆さんにさまざまな形でお力添えをいただきました。皆さんのご協力に心から感謝します。

(はが ゆうこ)

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補足 最近の動き

 2001年11月18日より、Suicaが本格的に導入されています。11月末現在では、JR東日本のSuicaのページにでは、「テキスト版」が用意されたり、ほとんどの画像に代替テキストが付けられるなど視覚障害者に対する配慮が実現されています。また、改札口の有人窓口で申し出ると、Suicaを音声対応にしていただけるという情報もあります。音声対応は、定期券の期限の2週間前、あるいはイオカードの残額が千円未満になった場合に、改札にタッチした際のビープ音の階数が増えるとのことです。

補足 埼玉弱問研 丸山 央

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