拡大読書器が日常生活用具として認定され、1993年度からその給付が開始されたことにより、強度、中度の弱視者の日常生活や就業環境が大きく改善されたことは、大いに評価に値する。ところが最近、拡大読書器の給付に当たって障害等級による制限を課している市町村があるという風評がある。確かに、一般的に日常生活用具と言えば給付対象は1、2級の重度の障害者に限られるケースが多い。しかし、拡大読書器の性質上、拡大読書器を利用することで生活上のメリットがあるのは、1、2級の者だけではなく、むしろ3〜5級の中度あるいは軽度の弱視者であることは、誰もが考えるところである。
埼玉弱問研では、埼玉県内の全ての市町村にアンケート調査の協力を求め、埼玉県内における拡大読書器給付の全体像を把握することとした。さらに、前述の障害等級による制限が、果たして県内に存在するかどうかを検証することとした。
過去3年間で全く給付実績がなかった市町村 36市町村(4市、22町、10村)
(注)当初、ありと回答したところが数市町村あったが、電話でその内容を確認した結果、担当者の勘違いによるもので、実際に障害等級により制限を設けている市町村はなかった。
申請者が指定する | |
申請者と自治体担当者で相談して決める | 49(59.0%) |
申請者に業者を紹介し、相談するようアドバイスする | 44(53.0%) |
取引業者に任せる | 2( 2.4%) |
今回のアンケートは、予想をはるかに上まわる回答率であった。協力をいただいた市町村担当者の方々には心から感謝したい。
拡大読書器の給付台数についてみると、ここ3カ年で増加傾向にあり、埼玉県内だけでも年間およそ100台の拡大読書器が給付されていることになる。このことは、給付制度が弱視者の日常生活や就労環境に好影響を及ぼしていると明言できる。
また、これだけの台数の拡大読書器を利用する弱視者の存在と拡大読書器に対するニーズの根強さが感じられる。日常生活用具以外の拡大読書器の需要、例えば雇用主や学校が購入するケース、個人が2台目、3台目を購入するケースも想定され、マーケットもかなり成長していることがわかる。
障害等級による給付制限は、回答を寄せた全ての市町村で行っていないことがはっきりした。この点は、今回のアンケートの最大の成果とも言える。今回のアンケートでは、近年、拡大読書器の給付実績のない市町村でも、明確に「制限なし」と回答している。担当者の方々がこれらの点について、少なからず制度の内容や趣旨について調べていただいたものと考える。
拡大読書器の機種決定方法については、ほぼ想定していたとおりの回答であった。申請者が指定するというのが最も多く、約7割に及ぶ。拡大読書器の機能や特長について、申請者(弱視者本人)が十分な情報と知識を持っていれば、これが最も望ましい姿だと考える。だが、十分な情報や知識を申請者が持ち得ないケースもかなりあるはずだ。この場合、申請窓口となる自治体の担当者が、その相談に応じてくれればどれだけ頼もしいことになるだろう。自治体担当者と相談して決めるという回答も全体の6割あったことは、少なくとも何らかの相談に窓口で応じてもらえるところがかなりあるということだ。ただし、その前提になるのは、自治体担当者にも拡大読書器についてのある程度の情報と知識を持つことだろう。
申請者に業者を紹介し、相談するようアドバイスするという回答が、半数以上あったが、できることならこうした対応ではなく、自治体担当者自らが相談に応じてくれた方が、客観的な情報も得られると思う。
これは、きわめて少数の回答だが、取引業者に任せるという回答も2件あったが、障害福祉担当課としての責任を全うすることを熱望する。
以上、アンケート調査の結果とその分析の概略を述べた。こうした調査を全国レベルで実施できれば、拡大読書器の給付状況も把握できるだろうし、自治体サイドの姿勢も明らかになると思われる。各地の地域弱問研の主体性に期待する。
最後に、アンケートに協力いただいた88市町村の担当者のみなさまに、重ねてお礼を申し上げる。